スポーツ指導の目的は、何?
高校野球の監督さんが2016年に参加した、
経営者向けの講演会で衝撃を受けた言葉。
「これからの時代、1球、1球、上司の顔色をうかがうような野球型の人間ではダメです」
自らが従事する競技を例えとした真理に
衝撃を受けたという。
青森県の弘前学院聖愛高校野球部の
原田一範(はらだかずのり)監督。
それ以来、野球で人を育てようと思い、
「ノーサイン野球」にしたそうだ。
試合中はベンチから戦況を見つめ、
アドバイスを送るだけ。
あとはグラウンドに立つ選手が状況判断し、
戦術が決まる。
「野球は無数の状況判断があるスポーツですので、それを1回1回(監督が)指示を出してしまうと、選手の状況判断能力の壁になってしまう。意外にも、監督が采配して邪魔することの方が多いんじゃないですか」
と彼は笑う。
「そんなこと(ノーサイン野球)してて、勝てるわけないだろ!」
批判されることもあったが、
原田監督に葛藤や戸惑いは、
一切なかったとのこと。
彼の理念が、
「高校野球を通じて自立させて、強く生き抜いていくための力を養い、全部員の成長と幸福を追求し、次世代を担う社会貢献できる人材を形成する」
週2、3回は朝の勉強会として
歴史上の人物や偉人から学ぶ。
松下幸之助氏、稲盛和夫氏の言葉から、
選手同士で感じたことを話し合う。
野球以前に、人としての教育を深め合っている。
ノーサイン野球を取り入れてから、
夏の大会は全てベスト8以上で2度の準優勝。
2021年には甲子園出場を果たし、
ノーサイン野球が脚光を浴びた。
甲子園を体験したキャプテンは、
「弘前学院聖愛の野球はノーサインの実践以上に、チームの思考力こそが肝だ」
「ノーサイン野球がやれているのは、『考える野球』を第一に掲げているからで。そこをブレずに試合ができているから、迷うことなく、接戦でも自分たちの判断で粘り強く戦っていけると思う」
と力強くいう。
原田監督は言った。
「目標は甲子園で優勝ですけど、目的は野球を通じての人間形成です」
弘前学院聖愛の野球部の選手、
野球を存分に楽しんでいると感じた。
彼らは、試合に負けた時、
悔しいけど、不満はないだろうな、と思った。